高齢者が入院すると肺炎が増えるのはなぜ?“廃用症候群”との関係

コミュニケーション

はじめに

「入院してから体が弱くなった気がする」
「寝たきりになって肺炎を起こしてしまった」

高齢者の入院後にしばしば耳にするこの現象の背景には、**廃用症候群(はいようしょうこうぐん)**と呼ばれる問題があります。
今回は、廃用症候群と肺炎の関係、そして予防のためにできることをわかりやすく解説します。


🧠 廃用症候群とは?

廃用症候群とは、体を動かさないことで筋力や心身の機能が低下する状態を指します。
英語では disuse syndrome と呼ばれ、ベッド上での安静が長引くほど進行します。

主な症状

  • 筋力低下・関節のこわばり
  • 寝たきりによる褥瘡(床ずれ)
  • 認知機能の低下・せん妄
  • 体力低下による感染症リスクの上昇

👉 高齢者はもともと予備能力が少ないため、入院をきっかけに急速に悪化することがあります。


🫁 廃用症候群と肺炎の関係

では、なぜ入院が肺炎リスクを高めるのでしょうか?

1. 呼吸機能の低下

ベッド上で動かない時間が長いと、肺が十分に膨らまず、痰がたまりやすくなります。
👉 この状態を「肺換気不全」といい、細菌が繁殖して肺炎を起こしやすくなります。

2. 嚥下機能の低下(誤嚥性肺炎)

筋力低下は飲み込む力にも影響します。
食べ物や唾液が気管に入ってしまうと「誤嚥性肺炎」を発症しやすくなります。

3. 免疫力の低下

活動量が減ることで血流や代謝が悪化し、免疫力が低下。
感染症全般にかかりやすくなりますが、中でも肺炎は重症化リスクが高いです。


⚠️ 高齢者が特に注意すべき理由

  • 加齢により呼吸筋が弱っている
  • 歯の問題や飲み込み力の低下が進んでいる
  • ワクチン接種率が低い場合がある
  • 一度の肺炎が要介護・死亡につながるリスクが高い

👉 入院そのものよりも、「入院による生活の変化」が肺炎増加の主因なのです。


💡 廃用症候群を防ぐ工夫

1. できる範囲で体を動かす

  • ベッド上で手足を動かす体操
  • 車椅子移動や短時間の歩行を取り入れる
  • 理学療法士のリハビリを積極的に活用

2. 呼吸リハビリ

  • 深呼吸を意識する
  • 息をゆっくり吐き切る練習
  • 看護師やリハビリスタッフによる「呼吸理学療法」で痰を出しやすくする

3. 嚥下訓練・口腔ケア

  • 食事前に首や口を動かして嚥下体操
  • 口腔清掃で細菌を減らす
  • とろみのある飲み物を使うなど食事形態の工夫

4. 栄養と水分補給

  • 低栄養は免疫力低下を招く
  • タンパク質やビタミンを意識的に摂取
  • 水分不足は痰を粘り気のあるものにし、誤嚥リスクを高める

🏠 家族にできるサポート

  • 面会時に一緒に体を動かす
  • 水分・食事の摂取を見守る
  • 痰がらみや咳の様子を医療スタッフに伝える
  • 退院後の生活を見据えて、在宅リハビリや訪問介護を準備

👉 家族が「声かけ」と「観察」を行うことで、廃用症候群や肺炎の早期発見につながります。


✅ まとめ

  • 高齢者が入院すると肺炎が増える背景には「廃用症候群」がある
  • 動かないことで呼吸機能・嚥下機能・免疫力が低下し、肺炎を招きやすくなる
  • 防ぐためには「リハビリ」「呼吸訓練」「口腔ケア」「栄養管理」が大切
  • 家族の見守りと支えが、入院生活の質を大きく変える

肺炎は高齢者にとって命に関わる疾患ですが、**「寝たきりにしない工夫」**によって大きくリスクを下げることができます。
「入院=安静」ではなく、「入院=回復のために体を動かす」という発想転換が重要です。


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