はじめに
近年の豪雨では「道路冠水による車両水没事故」が全国各地で発生しています。特に危険なのが、立体交差や高架下にある**アンダーパス(道路のくぼんだ部分)**です。雨が降り続くと短時間で冠水し、車両が立ち往生するだけでなく、最悪の場合ドライバーが命を落とす事故も起きています。
この記事では、なぜアンダーパスが危険なのか、どんな事故が起きているのか、そして私たちが取れる回避策について詳しく解説します。
なぜアンダーパスは冠水しやすいのか?
アンダーパスは周囲の道路より低い位置にあるため、雨水が自然に流れ込みやすい構造になっています。
さらに、
- 周辺の排水路が容量を超える
- 下水道が豪雨に対応できない
- 排水ポンプが故障、または処理能力を上回る
といった要因が重なると、わずか数十分で水深が1mを超えることも珍しくありません。
実際に起きた事故事例
- 2021年 静岡県:台風による大雨でアンダーパスに車が突入、水没。乗員が取り残され死亡。
- 2018年 岐阜県:ゲリラ豪雨で車が冠水したアンダーパスに進入、車内に閉じ込められた人が救助された。
- 2000年 東海豪雨:名古屋市内で複数のアンダーパスが水没。多数の車両が動けなくなり都市機能が麻痺。
これらの事例に共通するのは、「進入時にはまだ浅かったが、あっという間に水位が上昇した」という点です。
車はどのくらいの水で動けなくなる?
- 水深10〜20cm:ハンドル操作やブレーキが効きにくくなる。
- 水深30cm:小型車は浮力でタイヤが路面をとらえられず、エンジン停止の恐れ。
- 水深50cm以上:ドアが水圧で開かなくなる。脱出が困難に。
つまり、膝の高さの水位で既に車は非常に危険なのです。
なぜ事故がなくならないのか?
- 過信:「自分の車なら通れるだろう」と思い込む。
- 判断遅れ:降り始めは浅くても、数分で深くなるケースを想定していない。
- 標識の見逃し:アンダーパスには「大雨時通行止め」の看板や水位計がありますが、雨や暗さで気づきにくい。
防ぐためにできること
1. 事前に経路を確認
- 大雨の予報が出たら、通勤・通学ルートにアンダーパスがあるか調べる。
- ハザードマップや自治体サイトには「冠水危険箇所」が公開されていることも多い。
2. アンダーパス手前でチェック
- 水位計のポールが設置されていれば必ず確認。
- 少しでも水がたまっていたら進入しない。
3. 迷ったら回避
- 「行けそうか」ではなく「危険かもしれない」で判断。
- Uターンや別ルートへの迂回を即決する。
4. 車が動けなくなったら
- ドアが開かない場合は窓から脱出。
- 電動窓が作動しなければ、緊急脱出用ハンマーでガラスを割る。
- ためらわずに車を捨てて避難する勇気が必要。
自治体や社会の取り組み
- 進入禁止ゲート:冠水時に自動でバーが下りる装置を導入する地域が増えている。
- 監視カメラ・センサー:水位を常時監視し、危険になると道路情報板やアプリで知らせる仕組み。
- 豪雨対応型インフラ:排水ポンプや雨水貯留施設の拡充。
まとめ
大雨時のアンダーパスは「見た目以上に危険な罠」です。
- 数分で水位が急上昇する
- 車は30cmの冠水で立ち往生
- 脱出が遅れると命に直結する
最も大切なのは「そもそも進入しない」という判断。
車に乗る前からルートを確認し、豪雨時は迂回や待避を選択することが、命を守る最大の行動です。

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