なぜ通信障害は起こるのか?原因を分かりやすく解説

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スマホが繋がらない、インターネットが使えない、キャッシュレス決済ができない…。こんな経験をしたことはありませんか?現代社会では、通信障害が起きると日常生活が大きく混乱してしまいます。

でも、なぜ通信障害は起こるのでしょうか。この記事では、難しい技術的な話を避けて、誰にでも分かるように通信障害の原因と対策を解説します。

  1. 通信障害って何?基本を理解しよう
    1. 通信障害の規模による分類
  2. 最も多い原因:機械の故障と設備トラブル
    1. 基地局の故障
    2. 光ファイバーの断線
    3. データセンターの設備故障
  3. みんなが一斉に使うと起こる混雑障害
    1. 大晦日・正月の「あけおめメール」ラッシュ
    2. 災害時の安否確認
    3. 人気イベントのチケット販売開始
    4. 大型アップデートの配信開始
  4. コンピューターのプログラム不具合
    1. ソフトウェアのバグ
    2. システム更新の失敗
    3. 設定変更によるミス
  5. 自然災害が引き起こす通信断絶
    1. 地震による被害
    2. 台風・豪雨による被害
    3. 火災による被害
    4. 落雷による故障
  6. 人間のミスが原因の障害
    1. 工事現場での誤切断
    2. システム運用でのミス
    3. 点検・清掃作業中の事故
    4. 設計・計画段階でのミス
  7. 最近増えているサイバー攻撃
    1. DDoS攻撃(分散サービス拒否攻撃)
    2. 不正アクセスによるシステム破壊
    3. ランサムウェア攻撃
    4. 国家レベルの攻撃
  8. 実際に起きた大規模障害から学ぶ
    1. KDDI大規模通信障害(2022年7月)
    2. NTTドコモ通信障害(2021年10月)
    3. 東日本大震災による通信麻痺(2011年3月)
    4. ソフトバンク大規模障害(2018年12月)
  9. 私たちができる対策と備え
    1. 複数の通信手段を確保する
    2. 緊急時の連絡方法を決めておく
    3. オフライン環境での備え
    4. 通信障害発生時の対処法
    5. 情報収集の方法
  10. まとめ:通信障害と上手に付き合う方法
    1. 覚えておきたいポイント

通信障害って何?基本を理解しよう

通信障害とは、スマホやパソコンでインターネット、通話、メールなどが正常に使えなくなることです。水道が止まったり、電気が切れたりするのと同じように、通信というインフラに問題が発生した状態だと考えてください。

通信障害の規模による分類

全国規模の障害
ドコモやソフトバンクなど大手キャリア全体でサービスが止まってしまうケース。数千万人に影響が及ぶこともあります。

地域限定の障害
特定の県や市町村だけで通信ができなくなるケース。台風や地震の被災地でよく見られます。

短時間の障害
数分から数時間で回復する一時的なトラブル。多くの人が気づかないうちに解決していることも。

長期の障害
復旧に丸一日以上かかる深刻なケース。社会全体に大きな影響を与えます。

現代社会では、通信が止まると銀行ATM、交通機関の運行情報、病院の診察予約システムなど、生活に欠かせないサービスまで影響を受けてしまいます。だからこそ、通信障害の原因を知っておくことが大切なのです。

最も多い原因:機械の故障と設備トラブル

通信は、目に見えない多くの機械や設備に支えられています。これらが故障すると、広範囲で通信ができなくなってしまいます。

基地局の故障

スマホの電波を送受信する基地局は、全国に約20万箇所設置されています。この基地局が故障すると、その周辺エリアで通信ができなくなります。

よくある故障原因

  • 電源装置の不具合(停電や電圧異常)
  • アンテナの機械的な故障
  • 制御コンピューターの異常
  • バッテリーの寿命切れ

光ファイバーの断線

インターネットの高速通信を支える光ファイバーケーブルが切れてしまうケースです。

断線が起こる理由

  • 道路工事での誤切断(年間数千件発生)
  • 建設工事中の重機による損傷
  • 地震や地盤沈下による破損
  • ネズミなどの小動物による被害

意外に思われるかもしれませんが、工事現場でのケーブル切断は通信障害の非常に多い原因の一つです。

データセンターの設備故障

インターネットサービスの心臓部であるデータセンターで問題が発生すると、広範囲のサービスに影響が出ます。

データセンターで起こりうるトラブル

  • 空調設備の故障による過熱
  • 電源システムの異常
  • 火災や水漏れ
  • サーバーコンピューターの故障

これらの設備トラブルは予防が難しく、どんなに対策を取っても完全にゼロにすることはできません。

みんなが一斉に使うと起こる混雑障害

道路が渋滞するように、通信回線も一度に多くの人が使うと「渋滞」を起こして、繋がりにくくなったり、速度が遅くなったりします。

大晦日・正月の「あけおめメール」ラッシュ

年明けの瞬間、多くの人が一斉にメールやLINEを送ろうとします。この時、通信回線がパンクして「メールが送れない」「電話が繋がらない」という状況になることがあります。

災害時の安否確認

地震や台風などの災害が発生すると、被災地では多くの人が家族や知人の安否を確認しようと一斉に電話をかけます。この結果、通信回線が混雑して正常に通話ができなくなってしまいます。

人気イベントのチケット販売開始

コンサートやスポーツ観戦のチケット販売が始まると、販売サイトに大量のアクセスが集中します。サーバーが処理しきれずにサイトがダウンしてしまうのも、この混雑が原因です。

大型アップデートの配信開始

iPhoneの新しいiOSや人気ゲームの大型アップデートが配信されると、多くの人が同時にダウンロードを試みます。この時も通信回線に大きな負荷がかかります。

通信事業者は過去のデータを分析して回線を増強していますが、予想を上回るアクセスが集中すると、どうしても混雑が発生してしまいます。

コンピューターのプログラム不具合

現代の通信システムは、複雑なコンピュータープログラム(ソフトウェア)によって制御されています。このプログラムにバグ(不具合)があったり、アップデートが失敗したりすると、大規模な通信障害が発生することがあります。

ソフトウェアのバグ

プログラムは人間が作るものなので、完璧ではありません。普段は問題なく動いていても、特定の条件が重なると予期しない動作をしてしまうことがあります。

2022年KDDI大規模障害の例
音声通話を制御するプログラムに不具合があり、全国で約3900万回線に影響が出ました。この障害は約86時間続き、多くの人の生活に深刻な影響を与えました。

システム更新の失敗

通信システムを改善するためのアップデート作業中に、予期しない問題が発生することがあります。

よくある更新トラブル

  • 新旧システムの互換性問題
  • 設定ファイルの不整合
  • データベースの破損
  • 更新作業中の人為的ミス

設定変更によるミス

通信システムの設定を変更する際に、入力ミスや手順の間違いが原因で障害が発生することもあります。

これらのソフトウェア障害は、物理的な故障と違って目に見えないため、原因の特定と復旧に時間がかかることが多いのが特徴です。

自然災害が引き起こす通信断絶

日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。これらの災害は通信インフラに深刻な損害を与え、復旧に長期間を要することがあります。

地震による被害

地震は通信設備にさまざまな形でダメージを与えます。

地震が引き起こす通信障害

  • 基地局の倒壊や損傷
  • 地下ケーブルの断線
  • 停電による機器停止
  • 道路損壊によるメンテナンス困難

東日本大震災での影響
2011年の東日本大震災では、東北地方の通信インフラが壊滅的な被害を受けました。基地局約29,000局が停波し、復旧に数ヶ月を要した地域もありました。

台風・豪雨による被害

強風や大雨も通信設備に大きな影響を与えます。

台風が原因の通信障害

  • 強風による基地局アンテナの破損
  • 倒木による電線・ケーブルの切断
  • 浸水によるデータセンター機能停止
  • 土砂崩れによる回線の寸断

火災による被害

山火事や建物火災も通信インフラに深刻な損害を与えることがあります。データセンターで火災が発生すると、広範囲のインターネットサービスが停止してしまいます。

落雷による故障

雷は通信機器の電子回路を破壊し、突発的な障害を引き起こします。特に夏の雷雨シーズンには、落雷による局所的な通信障害が頻発します。

自然災害による通信障害は、被災地の救援活動や安否確認にも影響を与えるため、社会全体への影響が特に深刻になります。

人間のミスが原因の障害

どんなに技術が進歩しても、通信システムの運用には人間の作業が欠かせません。残念ながら、人為的なミスによる通信障害も少なくありません。

工事現場での誤切断

最も多い人為的障害の一つが、建設工事や道路工事での光ファイバーケーブルの誤切断です。

誤切断が起こる理由

  • 地中の配線図の不備
  • 工事作業者への情報共有不足
  • 確認作業の怠慢
  • 急いでいる時の注意不足

国土交通省の統計によると、年間約4,000件の工事関連ケーブル損傷事故が発生しており、その多くが通信障害の原因となっています。

システム運用でのミス

データセンターや基地局での保守・運用作業中に発生するミスも障害の原因となります。

よくある運用ミス

  • 設定変更時の入力間違い
  • 機器交換作業での接続ミス
  • メンテナンス手順の飛ばし
  • 複数作業者間の連携不足

点検・清掃作業中の事故

定期的な設備点検や清掃作業中に、誤って重要なスイッチを切ってしまったり、ケーブルを抜いてしまったりすることがあります。

実際にあった事例

  • 清掃作業員が誤って電源スイッチを切断
  • 点検作業中にケーブルを踏んで断線
  • 設備交換時の配線間違い

設計・計画段階でのミス

システム設計や工事計画の段階での見落としや計算ミスが、後になって大きな障害を引き起こすこともあります。

これらの人為的ミスを完全に防ぐことは困難ですが、作業手順の標準化や複数人でのチェック体制により、リスクを減らす努力が続けられています。

最近増えているサイバー攻撃

インターネットが社会インフラとなった現代では、悪意を持った第三者による攻撃も通信障害の原因となります。

DDoS攻撃(分散サービス拒否攻撃)

大量のコンピューターから一斉に攻撃対象のサーバーにアクセスして、サービスを停止させる攻撃です。

DDoS攻撃の仕組み

  1. ハッカーが多数のコンピューターをウイルスで乗っ取る
  2. 乗っ取られたコンピューターが一斉に標的サーバーにアクセス
  3. サーバーが処理しきれずにダウン
  4. 正常なユーザーがサービスを利用できなくなる

不正アクセスによるシステム破壊

通信事業者やインターネットサービス事業者のシステムに侵入して、設定を変更したり、データを破壊したりする攻撃です。

不正アクセスの手法

  • パスワードの推測・盗取
  • システムの脆弱性を利用した侵入
  • 内部関係者による犯行
  • ソーシャルエンジニアリング(人を騙す手法)

ランサムウェア攻撃

システムのデータを暗号化して使用不能にし、復旧と引き換えに身代金を要求する攻撃です。

ランサムウェアの被害例

  • 病院の診察予約システム停止
  • 自治体の住民サービス停止
  • 企業の業務システム麻痺

国家レベルの攻撃

他国の政府や軍事組織が、重要なインフラを攻撃対象にすることもあります。これらの攻撃は特に深刻で、国家安全保障の問題にもなっています。

サイバー攻撃による通信障害は、技術の進歩とともに高度化・巧妙化しており、通信事業者にとって大きな脅威となっています。

実際に起きた大規模障害から学ぶ

過去に発生した実際の通信障害事例を見ることで、原因や影響をより具体的に理解できます。

KDDI大規模通信障害(2022年7月)

障害の概要

  • 期間:約86時間(3日半)
  • 影響:音声通話とデータ通信で最大約3915万回線
  • 原因:音声通話設備の不具合

何が起こったのか
設備更新作業中にルーター(通信を中継する機器)に異常が発生し、音声通話を制御するシステムが正常に動作しなくなりました。一つの機器の不具合が全国規模の障害に拡大したのです。

社会への影響

  • 救急要請の電話が繋がらない
  • 銀行ATMが使用不能
  • 宅配便の再配達依頼ができない
  • 高齢者の見守りサービス停止

学んだ教訓
一つの設備に障害が発生しても全体に影響しないよう、システムの冗長化(バックアップ体制)の重要性が改めて認識されました。

NTTドコモ通信障害(2021年10月)

障害の概要

  • 期間:約29時間
  • 影響:音声通話・データ通信・spモードメールなど
  • 原因:網切替設備の故障

何が起こったのか
通信網を切り替える設備に不具合が発生し、新しい通信方式(VoLTE)を利用するユーザーに影響が出ました。古い通信方式(3G)は正常だったため、設定変更で通話できるケースもありました。

東日本大震災による通信麻痺(2011年3月)

被害の規模

  • 固定電話:約190万回線が被災
  • 携帯電話基地局:約29,000局が停波
  • インターネット:東北地方の広範囲で長期間停止

復旧への取り組み

  • 移動基地局車による応急復旧
  • 船舶型基地局の展開
  • 気球型基地局の実用化
  • 衛星回線による緊急通信確保

災害通信の教訓
この震災を機に、災害時でも通信を確保するための技術開発と体制整備が大幅に進歩しました。

ソフトバンク大規模障害(2018年12月)

障害の概要

  • 期間:約4時間半
  • 影響:全国で音声通話・データ通信が利用困難
  • 原因:ソフトウェア更新の不具合

何が起こったのか
通信設備のソフトウェア更新作業中に設定ミスが発生し、全国規模の障害に発展しました。更新作業の手順に問題があったことが後の調査で判明しています。

これらの事例から分かるように、通信障害は様々な原因で発生し、現代社会に大きな影響を与えることがあります。一方で、各事業者はこれらの経験を活かして、より強固なシステム作りに取り組んでいます。

私たちができる対策と備え

通信障害を完全に避けることはできませんが、私たちユーザー側でも被害を最小限に抑える準備をすることができます。

複数の通信手段を確保する

異なるキャリアの回線を用意

  • メイン回線とサブ回線で違う事業者を選ぶ
  • 格安SIMを予備として契約する
  • 家族で異なるキャリアを使い分ける

Wi-Fiとモバイル回線の使い分け

  • 自宅Wi-Fi + スマホ回線の両方を確保
  • 公衆Wi-Fiスポットの場所を把握
  • モバイルWi-Fiルーターの準備

緊急時の連絡方法を決めておく

災害用伝言サービスの使い方を覚える

  • 災害用伝言ダイヤル「171」
  • 災害用伝言板「web171」
  • 各キャリアの災害用伝言板

家族との連絡ルールを決める

  • 集合場所の決定
  • 県外の親戚を連絡中継点にする
  • SNSでの安否確認方法

オフライン環境での備え

現金の準備
キャッシュレス決済が使えなくなった時のために、ある程度の現金を常に持ち歩きましょう。

オフライン地図の準備
スマホの地図アプリで、よく行くエリアの地図をダウンロードしておきます。

紙の地図や電話帳
完全にアナログな情報源も、いざという時に役立ちます。

電池式ラジオ
スマホの電池が切れても情報収集できるよう、ラジオを準備しておきます。

通信障害発生時の対処法

慌てずに状況を確認

  • 自分だけの問題か、広域の障害かを判断
  • 公式アカウントやニュースで情報収集
  • むやみに電話を繰り返さない

代替手段の活用

  • Wi-Fiが使えるなら優先的に使用
  • 他のキャリアの回線で情報収集
  • 公衆電話の場所を確認

電池の節約

  • スマホの省電力モードを活用
  • 不要なアプリは終了
  • モバイルバッテリーの準備

情報収集の方法

公式情報源を確認

  • 通信事業者の公式サイト・アプリ
  • 総務省の障害情報
  • NHKなどの報道機関

SNSでの情報収集

  • 公式アカウントの情報を優先
  • 不確実な情報の拡散は避ける
  • 地域の状況をハッシュタグで検索

これらの備えをしておくことで、通信障害が発生しても慌てずに対処できるようになります。

まとめ:通信障害と上手に付き合う方法

通信障害の主な原因は以下の6つに分類できます:

技術的な原因

  • 機械・設備の故障
  • ネットワークの混雑
  • ソフトウェアの不具合

外部的な原因

  • 自然災害
  • 人為的ミス
  • サイバー攻撃

現代社会では通信が止まると深刻な影響が生じますが、原因を理解し、適切な備えをしておくことで、被害を最小限に抑えることができます。

覚えておきたいポイント

通信障害は避けられないリスク
どんなに技術が進歩しても、通信障害をゼロにすることはできません。しかし、事業者の努力により障害の頻度は減り、復旧時間も短縮されています。

複数の手段を持つことが大切
一つの通信手段に依存せず、複数の選択肢を持つことで、いざという時に困らずに済みます。

正しい情報収集が重要
障害発生時は憶測やデマが広がりやすいため、公式情報源からの正確な情報収集を心がけましょう。

日頃の備えが明暗を分ける
「もしも」の時を想定した準備をしておくことで、実際に障害が発生した際の困り度が大きく変わります。

通信技術は日々進歩しており、5GやIoT(モノのインターネット)の普及により、私たちの生活はより便利になっていきます。一方で、システムの複雑化により新たなリスクも生まれています。

大切なのは、便利さを享受しながらも、それに完全に依存するのではなく、「通信が使えない時」のことも考えた生活設計をすることです。

通信障害を「避けられない自然現象」として受け入れ、適切な備えと知識を持って、デジタル社会を上手に生き抜いていきましょう。

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